今回ご紹介するのは「17Live」です。
サービス概要について
17Liveは、誰でも手軽に動画をライブ配信できるアプリです。
競合としてはSHOWROOM、Pococha、YouTube Live、ツイキャス、Twitch、MixChannelなどがありますね。
動画のライブ配信はここ数年で爆発的に市場が伸びている分野で、とはいえ私のまわりにはこういったアプリを使っている人がほとんどいないため、興味を持っている分野です。
では、さっそくサービスのビジネスモデルを図解で見てみましょう。
図解してみる

(※図解は、ビジネスモデル2.0図鑑でお馴染みのチャーリーさん(@tetsurokondoh)が配布してくださっている「ビジネスモデル図解ツールキット」を使用させていただいております。)
ライブ配信アプリの収益源は「投げ銭」
基本的には投げ銭機能が収益の柱です。
投げ銭といえば以前は路上ライブとか大道芸とか、リアルな対面の場で行われていましたが、それが今やインターネットで手軽にできちゃう!という。
しかも、配信を見てみると、平気で万単位の投げ銭をする人がいるのでビックリします。
路上ライブじゃなかなか大きい金額の投げ銭って見ないじゃないですか。
それがインターネットでやると面白いようにケタが増えるってところが凄いです。
ライブ配信アプリでは何が重要なのか
動画の配信者=ライバーがいないと話にならないので、そのあたりの設計がうまく行ってないとそもそもサービスとして成り立ちません。
それと、視聴者の方に目を向けると、投げ銭をストレスなくできるUI/UX、長期的に滞在、ファンとして固定化させるための仕組みづくりも必須です。
17LiveはSHOWROOMと比べて、より素人の一般人をライバーの中心に据えて、「素人でも有名になれる」というシンデレラストーリーを実現できるアプリとしてのブランディングをしているように見えます。
動画のライブ配信サービスが持っている可能性はまさに一般人と芸能人の境目を曖昧にさせるところにあると思っているので、AKBグループを中心としたアイドル系芸能人が前面に出ているSHOWROOMより17Liveのほうが好きですね。
法律面を整理してみる
さて、それでは、気になった点について法律面から見てみようと思います。
投げ銭機能の実現─資金決済法のはなし
まずは投げ銭機能ですが、ここは前回も登場した資金決済法による規制と、それを回避するためのスキームの話です。
詳細なスキームの解説は省略しますが、17LiveではPokeできる権利やギフトを有料で買い、それをライバーに贈る仕組みを採用しています。
よく見ると本当にただの投げ銭なんですよね、これ。
ただ、法律まわりの手当てを考えるとこういう形に落ち着くわけです。
キャバクラ・ホストクラブも普通に買ったら大した値段しないお酒を高いお金出して買ってキャスト応援してるし、それが原価ゼロになりましたって視点で整理すると少しスッキリする気がします。
むしろ自分の応援したい分だけギフトとして投げ銭できるので、よっぽどGoodな仕組みだと思います。
投げ銭自体、普通にお金を渡すよりは「ギフト」という形で贈り物をしますという方式でワンクッションあったほうが、贈る方の心理的負担も軽くなる感じはあります(主観。心理学的な根拠が欲しい。)。
これも、お客さんがブランド物とか贈って裏で換金してるキャb(以下略
体験談の配信と広告規制
次に気になった規約が体験談広告に関する条項です。
広告はいわゆるステマが社会問題になったのがいい例で、「効果がある!」と宣伝された化粧品に実際の効果がないなど、受け手が困る可能性があります。
17Liveの場合はライバーが「今日買ったこの化粧品が良かったよ〜」とか「このサプリ飲んだら5kg痩せた!」なんて宣伝(口コミ)するケースが想定できますね。
こういった広告に対する規制で関わってくるのは景品表示法、薬機法、健康増進法などです。
商品の販売者がする広告を規制するのが主ですが、販売者からPRのお願いを受けた人が宣伝する行為も規制対象です。
ステマもこの類型です(芸能人がある製品について「いい!」と口コミしたが、実はその口コミは製品の販売会社から依頼を受けてのものだった事例など)。
逆に、単純に自分が製品を買うなどして試した結果、「良かったよ!」など口コミをするのは、基本的に規制対象外となります。

プラットフォーマーである17Liveは配信内容については直接関係がないので、仮に配信者がステマを行っていても責任を負うべき主体とは考えられません。
が、リスクがないわけではないので、規約に明記しておくのがベターな対策というわけですね。
(たとえば、 公式ライバーとして認定した配信者がステマ配信ばっかりしていて、運営がそれを放置してしまっていた場合など)
ライブ配信についてまわる知的財産権侵害のリスク
最後に、知的財産権の侵害処理について。
17Liveでは、アーティストを目指す人が自分で演奏したり歌ったりという配信がそこそこの数存在しています。
路上ライブを17Live上でやるようなイメージ。
これに限らず、ライバーが第三者の知的財産権(主に著作権)を侵害するケースは容易に想定できます。
ここでプラットフォーマーである17Mediaは「ユーザーがやっていることで、私達は関与していません」と言えれば楽なのですがそうも行きません。
適切に監視ないし管理をしていないと、その責任を問われかねません。
というわけで、トラブルが起きた場合のフローが規約として明記されています。
今後のサービス展開を妄想してみる
楽しいたのしい妄想のお時間です。
「投げ銭×ライブ配信」は最適な組み合わせのひとつ
投げ銭自体は前からあるのに、「×ライブ配信」がなぜこんなにも熱狂しているのか。
それは、課金という行動に対するレスポンスのスピードと質が圧倒的に良いからです。
例えばTwitterでのつぶやき。
つぶやきに対して誰かの「それわかる~!」などポジティブなリプライがあると、少し嬉しい気持ちになりませんか?
それに対して更にリプライすると、お互いにより嬉しくなりますよね。
自分のとった行動に対して何らかのポジティブな反応があると、人は欲求が満たされます。
17Liveでいえば、視聴者がライバーにギフトを贈ったとき、ライバーが「〇〇さん、ありがとう~!」と返してくれる←コレです。
17Liveで課金したことのある人の体験談を読んでみると、「すぐにレスポンスが返ってきてヤバい」という内容が共通して書かれています。
ライブ配信の場合、投げ銭をするという行動に対するライバーの「ありがとう」のレスポンスが圧倒的に早く(ほぼリアルタイム)、自分の名前付きで「ありがとう」を言ってくれるので質も良いのです。
投げ銭に対するレスポンスとしての最適解は、今のところコレ以上のものは無いんじゃないでしょうか。
重課金者に頼る構造はライブ配信でも同じか?
話は少し逸れますが、ソシャゲ業界は、「重課金者」と呼ばれる、全ユーザーのうち数%の人の取り合いが激しいと言われています。
重課金者の課金額は、課金全体の半分を占めているというデータもあります。
https://gigazine.net/news/20160325-mobile-market-report-2016/
ライブ配信アプリはソシャゲのフリーミアムモデル(基本無料、付加要素有料)をさらに推し進めた形と捉えられるので、基本的には「重課金者が数%で~……」というソシャゲ業界の文脈が活きるはずです。
ということは、ライバーにとって肝心なのは、重課金勢(ギフター)をいかに捕まえて離さないかという点で、ファンをたくさん獲得する重要性はそこまで高くないと考えられます。
だからこそ、無名の一般人が配信開始から2ヶ月で100万超え!なんてシンデレラストーリーも可能になるわけですよ。
これを運営サイドから見ると、ギフターをいかに17Liveに集めるかという、ソシャゲ業界における重課金者の取り合いと同じ構造が浮かび上がってきます。
17Liveにはすでにサクセスストーリーがいくつもあって、ライバーを集めるための施策はいくらでも打てる状態にあるので、今度は視聴者、それもしっかり課金してくれるユーザーをさらに集めなければなりません。
SHOWROOMの場合は、アイドルを軸に考えると、お金を払うことにハードルがない(すでに物販やライブなどでお金を使うことに慣れている)ファンをそのままSHOWROOM上に持ってこれるので、そこまで障害はないと考えられます。
これに対して17Liveは、 無名の人が17Liveのみ(もしくは課金システムのないSNSからの流入)で配信を開始してファンを獲得していく、という事例を想定すると、
・そもそも、どうやってファンをつけさせるか
・ファンの課金ハードルをいかに無くすか
などのハードルを超えなければならないという課題があります。
(さらに、ソシャゲ業界の最近の動向は、重課金者の取り合いから無課金者にいかに最初の課金をさせるかにシフトしているという話も聞きます。ライブ配信でも、無課金で視聴しているファンに課金してもらう重要性は高まっているのかもしれません。)
ライバーは増え続けるのか?
それと、別方向の問題として、有名になったライバーをいかに17Liveにとどめておくか、という問題もあります。
17Liveの場合は公式ライバーになってもインセンティブが最大50%しかありません。
普通に配信しているだけでは最低13%程度。
このインセンティブ率、鬼です。
Youtubeのスーパーチャットは70%なので、単純にお金のことだけ考えればライバーが17Liveに残るメリットはありません。
(SHOWROOMは認定を受けても35%とからしい。)
考えられる施策は大きく分けると2つで、
①有名になった人は自由にしてよく、17Mediaが新規のライバー/ファンを獲得し続ける
②有名になった人には公式ライバーよりも更に強いインセンティブを与え、17Liveを使い続けてもらう
です。
ライバー全体に対してのファンの比率や課金率を見てみないと何とも言えませんが、素人でも有名人になれるというコンセプトには①のほうがあっている気がします。
しかし、新しいライバーが湧き出る泉の如く次々出てくるのかという問題にぶち当たります。
ここはどうなんだろうなー…。
今の中高生が顔を出すことに抵抗感がなく、「ちょっとお金稼ぎたいなら17Liveだよね!」となればスタンダードになる気はするのですが、感覚値さえ持ち合わせていないので正直言ってわかりません…。
個人的にはVTuberに結構なお金が落ちているのを見ていると、楽勝でVTuberのモデル作成・配信ができるプラットフォームの方がライバーの裾野が広くて強そうに思えるのですが……。
ひとまず「投げ銭×ライブ配信」はスゴい
どちらにしても「投げ銭×ライブ配信」モデルは、物販から体験と来てその次に取って代わり得るポテンシャルを持ってると思うので、今後も注視していきたいジャンルです。
投げ銭の軸だけで見ると他にも色々サービスはあります(note、Polca、PayPal.me、Bandcamp等)が、その力を最大限に発揮できるのは今のところライブ配信で揺るぎないです。
その中でも17Liveはオフラインイベントもやってて面白い。
https://kai-you.net/article/52915
私自身がこうしたライブ配信アプリを(少なくともライバーとして)利用することはないと思いますが、その発展を願ってやみません。
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