今日ご紹介するサービス今日ご紹介するサービスはCREWです。
サービス概要について
「互助モビリティ」というコンセプトから生まれたライドシェアサービス。
一見すると海外版のUberやLyftなどと同じ、CtoCのタクシーみたいなサービスに見えますが、これがなかなかどうして面白いモデルになっています。
さっそく図解してみましょう。
図解してみる

ビジネスモデルもパッと見はよくあるCtoCシェアエコの形。
「感謝料」でまわすCtoC
特徴的なのは、利用者が実費以外の料金を支払う義務がない、という点です。
その代わり、利用者は「感謝料」として任意の金額をドライバーに渡すことができます。
乗せてくれたことに対するお礼に自分で値段をつけて贈るという設計です。
CREWの肝であるこの感謝料は、タクシー業界の法規制と深く関わってくるところです。
法律的な話は後述するとしてサービスを正面から見ると、感謝経済の文脈で捉えることができますね。
インタビューによれば
「「習いごとの送り迎えを近所のおばちゃんにやってもらっていたような」(吉兼氏)近隣の人との信頼関係が前提の移動手段」
https://www.businessinsider.jp/post-174418
ということで、タクシー文化の派生・進化版であるUberとは全く発想が違います。
実際に鹿児島県の与論島で実証実験済み。
もともと互助の文化が根付いており、対して交通手段が不足しているという課題があったとのことで、上手くいったようです。
法律的な視点で見てみる
法律的に見て一番興味深いのは、やはり感謝料の仕組みです。
運賃と道路運送法のはなし
普通にタクシーを使ったら距離や時間に応じた運賃を支払いますよね。
CREWが感謝料ではなくこうした運賃制を導入すれば、海外版のUberと見た目はほぼ同じになります。
が、これは参入障壁があるためできません。
具体的には道路運送法です。
タクシー事業(一般乗用旅客自動車運送事業)を営むためには、許可を受ける必要があります。
許可なしにタクシー事業をするのは「白タク」などと呼ばれ、社会問題化したことがありました。
Uberが日本にローカライズした結果としてプレミアムなタクシー配車アプリになったのは、この規制が主な原因です。
(Uberは、海外だと普通の一般人が迎えに来ますが、日本の場合は提携しているタクシー事業者が迎えに来ます。)
CREWはこの規制に着目すると「なるほど」となります。
どんなものがタクシー事業にあたるかというと、
他人の需要に応じ,有償で,自動車を使用して旅客を運送する事業
です。
ということは、他人の需要に応じて旅客を運送するものでも、無償であれば該当しません。
そのため、許可を得る必要もありません。
許可が要らないということは、誰でも運転手になって誰かを運べることになります。
でも、タダで誰かを運んであげる超絶親切さんは、なかなかおりません。
CREWは、ここに感謝経済の考えを取り入れ、「感謝料」として支払いたい額だけ渡してね、と設計しているわけです。
いやーうまい。
今後のサービス展開について妄想してみる
今後について妄想してみましょう。
CREWのサービスはどうなる?
まずはCREW単体のサービス展開について、
現状、実証実験を行った与論島のような地方では、CREWの思想である「互助モビリティ」が比較的オリジナルな形で実現できると思います。
これに対して、渋谷などの都市部はどうでしょうか。
都市部は地方に比べてコミュニティ形成が希薄であるという前提に立てば、CREWは「短距離のヒッチハイクをマッチング」するサービス(で、感謝料を贈れる機能がある)と捉えるのが、イメージとしては自然です。
一般的には、お金のやり取りがあってこそ運送サービスをやるドライバーがいるのだと考えられるでしょう。
そうすると、CREWが都市部でスケールしていく姿はなかなか想像しにくい感があります。
CREWから伸びる新しいモビリティの可能性
実は、CREWはこの点について明確な意識を持っているようです。
都市部の交通課題を可視化することを目的とした実証としての位置付け
https://crewcrew.jp/20190201-crew-restart/
つまり主眼はビジネスとしてスケールしていくことではなくて、データをしっかりとって都市部の交通課題を知ることにあると。
取れるデータは距離、時間、頻度、天候等状況別の利用率etcなどの利用状況と、感謝料としてどれくらい支払われているか、あたりでしょうか。
利用状況については他のタクシー配車アプリでも似たようなデータが取れそうですが、「運送してくれたことに対してどのような値付けを行うのか」というデータはかなり面白そうです。
ほんの一例ですが、MaaSの設計をするときの価格設定には大いに役立ちそうな気がします。
MaaSはMobility as a Service/モビリティ・アズ・ア・サービスのことで、ざっくり言うと
「電車とかバスとかタクシーとか、交通手段まるっと含めて出発地から目的地まで行くためのサービス」
と捉えるといい感じです。
いまは電車の定期、バスの定期、タクシーの運賃など、それぞれ個別に支払わなければなりません。
これを統一化して、「出発地→目的地」の交通をパッケージ化するのがMaaSです。
で、MaaSの設計をするときに必要なのがパッケージの運賃設定ですが、単純な足し算だとあまり意味がありません。(これならSuica等で足りる)
そこで、どのくらいまでディスカウントできるのかを考えることになりますが、このときにCREWの持っているデータが強みになるのではないか、という予想です。
すでに資金調達済みですし、長期スパンで見ればめちゃめちゃ面白いことになりそう。
短期的な利益ももちろん大事ですが、長期的なビジョンを実現するための道筋を垣間見れるのは楽しいですね。
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