今回、ご紹介するのは「VACAN」というサービスです。
ショッピングモールに出向いてご飯食べようとして、いざお店に出向いても行列が…みたいな経験、誰しもあると思います。
それをITで解決するのが「VACAN」です。
サービス概要について
VACANは、飲食店の空席情報をリアルタイムで解析・表示するサービス。
いざお店に行っても「満席で入れない……」なんて失敗も、VACANでリアルタイムの空席状況をチェックできるため、なくすことができます。
図解してみる
早速、図解してみましょう。

キャッシュポイントは飲食店からのVACAN利用費ですね。
空席情報を受け取るユーザーは無料で利用できます。
センサーやカメラで空席状況をリアルタイム検知
VACANの肝である空席状況の認識は、座席に仕込まれたセンサーや天井等につけられたカメラの画像解析で行います。
センサーは自社開発の特化型とのことです。

デジタルサイネージで空席状況がひと目で分かる
解析された空席状況は、デジタルサイネージで一覧表示されます。

実際に店先まで行かなくても、そのショッピングモールに入っている全ての飲食店の空席情報が一覧で確認できるわけです。
そのため、空席情報をもとにお店選びをすることができるんですね。
行きたいお店が満席で、もう一つの気になってたお店に行ったらさっきは空いてたのにいつの間にか満席で……みたいな状況を減らせます。
このような情報はスマホでも確認することができるので、買い物中にちょっと確認したり、店が空くまで買い物しながら時間をつぶしたり…なんてこともできちゃいます。
さらに、「VDO [Vacant-driven Display Optimization]」という特許技術により、満席時でもただ「満」の表示をするのではなく、予想待ち時間の表示や、お持ち帰り用メニューのレコメンドをしたり、状況に応じた限定クーポンを配信、なんてこともできるみたいです。
ただ「空」か「満」かを表示するのではなく、そこから一歩進んだ情報を提供しているのがUI/UXを押し上げている感じがあってクールですね。
データ解析で集客につなげる
VACANを導入していると、曜日・時間帯別の空席状況─稼働率の推移が継続的に蓄積されていきます。
お店としては、この情報を元にして人員の再配置を検討したり、稼働率の低いときを狙ったクーポンを配信して集客につなげたり、材料の仕入れを最適化することができるようになります。
「空席」という情報を今までどこも取っていなかったので、VACANを導入してこそできるユースケースですね。
法律面について
法律面で気になる点ですが、3点ほど見ていきたいと思います。
ちなみに、規約全体を通して非常に読みやすく、自分もこういう規約を作りたいなと思いました。
これ作った法律事務所どこなんですかね…
(関係ありませんが、VACANの利用規約ページを見ると、利用規約の各条文がアニメーションで表示されます。こういう見せ方を利用規約ページで使っているのは見たことがなかったので、ちょっと面白いなと思いました。http://vacan-serviceofterms-privacypolicy.strikingly.com/ )
APIの利用許諾
VACANはサービスにアクセスするためのAPIを提供しているようです。
馴染みのあるところで言うと、Twitterを見るときは公式アプリを使うのが主だと思いますが、サードパーティが提供するアプリでも見れますよね。
これはTwitterがAPIを公開しているからできることなんですね。
ただ、一口にAPIを提供するといっても、誰でも自由に使えてしまうと関係ない人もサービスにアクセスできてしまうので困ります。
そこで、APIをどの範囲で公開するかを定めておく必要があるのですね。
VACANの規約では、VACANの利用契約をした者が別途APIの利用契約をすることで提供をする形をとっています。
デバイスの設置に関する許諾事項、危険負担の規定
VACANを利用するには、センサーを設置する必要があります。
つまり、VACANの利用には「センサー」というハードウェアを扱う必要があるので、これについても規定しておく必要があります。
まずはVACANのセンサーの所有権がどの段階でVACAN社からお店に移転するのか、です。
VACANのセンサーは利用者が購入して利用する形態になっています。
こういうのってレンタルであることが多いんですが、VACANは購入してもらう仕組みなんですね。
ただ、お店側でセンサーを設置するのもちょっと面倒です。
ちゃんと感知できる場所に設置する必要がありますし、お店のデザインとの兼ね合いでなかなかベストな設置場所が見つからないことも考えられます。
そこで、VACAN側が設置を行うことが考えられます。
この場合は、設置した時点でお店側に所有権が移るように規定されています。
これに伴って考えておかないといけないのは、危険負担の処理です。
危険負担とは、ざっくり言うと、物が壊れたときに、売主と買主のどちらがその責任を負うか、ということです。
この辺は学説の論争があって、債権法改正でも影響を受けるところだったりして面倒なんですね。
なので、規約できっちり定めておくと無用なトラブルを回避することができます。
VACANでは、一般的な処理にならって、「所有権の移転とともに危険も移転」という規定になってます。
情報の正確性に対する保証の否認
最後に、空席情報の正確性に対する保証の否認についてです。
いくらセンサーやカメラで空席状況を解析するといっても、センサーのトラブルや回線状況によって正確に情報が更新されないといった状況は充分に考えられます。
こういう場合には、実際のお店の空席状況とサイネージ等で表示される情報に食い違いが生じることになるので、VACANの「空席」という情報を信じてお店に出向いてみると、満席で待ちが生じていた、という事態が生じたりします。
これではお客さんからクレームが来てしまいますよね。
これに関してVACAN側で100%責任を負うということはしませんよ、というのが保証の否認という形で規約に組み込まれています。
今後の展開について妄想してみる
では、VACANの今後について妄想してみるお時間です。
横展開はいろいろ考えられそう
「空席」という情報を可視化するのは一部ありますが、その先のUI/UX含め提供している競合はおそらくないので、横展開は色々と考えられそうです。
例えば、ホテルのチェックアウト待ち。
できるだけスマートにチェックアウトを済ませたいのに、フロントが混んでて待たされる、なんてことは割とよくあります。
ここにVACANが入ると、「あ、今は混んでるからもう少し部屋でゆっくりしてから行こう」という選択ができるようになりますね。
また、ホテル側に立って考えてみると、「待ってくれたらコーヒー一杯無料」みたいなクーポン配信もできそうです。
例えば、コワーキングスペース。
特に土日なんかは満席のときも多くて、せっかく足を運んでドロップインしようと思ったのに入れない、なんてことがあります。
VACANが入ればスマホで空席状況をチェックできるので、渋谷駅周辺にあるコワーキングスペースの空席状況を一覧表示できるサイトがあればスペース選びも捗ります。
この他にも、「待ち」が発生しそうなところであれば、どこでもVACANを導入するメリットはあるので、本当に色々なお店や場所に展開できますね。
あと、Googleマップでお店情報を検索すると、場所によっては、GPSや検索数などに基づいた混雑状況予測が表示されますよね。

将来的に、これがVACANに置き換わったら超絶便利です。
料金変動制を導入するのも面白そう
VACANで蓄積される情報を生かして、混雑状況に連動して料金が変動する仕組みを取り入れるのも面白そうです。
例えばカラオケ店では、平日と休日で料金体系が分けられていることが多いですよね。
でも、明らかに空いているのに、祝日料金取られるのもちょっと微妙な感じがしませんか?
逆に、平日でも満室状態であれば、お店側としては「もっと料金あげられるのに…」と考えてもおかしくない。
そこで、VACANで溜めたそれまでの稼働率などのデータと、リアルタイムの空席状況をリンクさせて、空いてるときは安く、混んでるときは高く、のような料金変動制を導入すれば良いのでは?という話です。
料金変動制が導入されている例として有名なのはラスベガスのショーです。
ラスベガスでは、豪華なショーが毎晩のようにたくさん行われています。
が、実はラスベガスで行われるショーのチケットには「定価」がありません。
今までの席の稼働率や、リアルタイムの予約状況に応じて、どんどん料金が変わっていくんです。
チケットの転売対策の一環として導入されている背景があるみたいですが、なかなか賢い仕組みだと思います。
これと似たようなことが、VACANを使えばできるのではないか、という目論見です。
画像解析の技術が進んで”センサー不要”になったら爆発的に普及しそう
現在はセンサーの設置が主?のようですが、画像解析の技術が上がってセンサーの設置が不要になったら、爆発的に普及しそうな感じがします。
だいたいの飲食店には監視カメラが設置されていますので、これとVACANのシステムを接続して空席状況を検知できるようになれば導入コストをかなり削ることができます。
VACANとしてもシステムの維持・管理に注力できますし、お店側も簡単に導入できるようになれば……
全部のお店の空席状況がVACANでわかるようになる、未来が来るかもしれません。
VACAN、全部の店で導入してください…!!
ほんと、あらゆるお店にVACAN導入してほしいです。
立場上、飲み会の幹事をすることが多いのですが、二次会の場所を探すのにいちいち電話して確認しないといけなかったり、色々面倒なことが多いのですよ……
将来はGoogleマップとの連携も視野に入れていただいて……
VACAN普及のためには、お店がVACANを導入するメリットをどこまで訴求できるかが大きなポイントになりそうですが、プロダクト自体はかなりイケてる感じがあるので、魅力的なUXが溜まっていけばガンガン攻められると思います。
気になった人はぜひ公式ホームページもチェックしてみてね!
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